あったか言葉とチクチク言葉

あったか言葉とチクチク言葉

あったか言葉とチクチク言葉

 ここしばらく前から、こうした言葉についての指導が注目されている
現場での実践例も枚挙に暇がない
ところが、いつの時代も「スタイル」は模倣されても、その背景は汲み取られない
したがって、とんでもない実践例などもないわけではない
著者は四つの学校の実践例をわかりやすく、共感的に説明してくれている。
はじめの、群馬県大町町立東小学校の市川先生の例では

「<チクチク言葉>を聞いたら、その都度するんですが、注意のしかたでも、これまでだったら
『なぜそんなことを言ったの?』というところを、
『その言葉は封印したはずだよね。でも、出てきちゃったね』と言うんです。
このほうが、子どもたちの心に響くのか、表情がフッと変わるんです。」
おそらく、自分で封印したからだろう。自分が約束したことをみずから破ったことに反省が生まれるようだ。
こうした地道な指導を続けていくうち、少しずつだが、確実に子どもたちに変化があらわれてきた。

富山県小矢部市立岩尾滝小学校の戸成校長の例では

戸成校長には、単に言葉そのものの教育をしてるのではなく、人と人とのつき合い方・関わり合い方を指導しているという信念がある。
「中学校へ行って、悪い遊びに誘われたとき、『お前、仲間に入れよ』と言われたら、はっきりいやだという断り方もある。しかし、うちの子には『ごめん、○○の理由があるから入れないんだよ』とか、『誘ってくれてありがとう。でもぼくは××するから、君たちはどう?』という対応ができる人間になってほしいと思っています。」
・・・・(中略)・・・
さらに校長は対応力について続けた。
「子どもたちや若者の言葉が汚くなった原因に、テレビ番組やゲームの影響がよく取り沙汰されますね。それでテレビ番組をどうにかせにゃいかん、ゲームも発売中止にせにゃいかん、といろいろおっしゃられる方もおられますけれど、実際にはそれは難しいし、現実に子どもたちはゲームをして遊んでいる。
だから、いろいろなことに対して規制も大事だが、こちら側も対応力をつけたらよいのではないか。対応力をつけてほしい、そう思ってずっと育てているんですよ。」

あとがきにはこのように書かれている

さて、<言葉の力>の話を持ち出したかというと、初等教育の現場で<言霊>が安易に引用され、子どもたちの指導に使われている例があるといううわさを耳にしたからである。
「言葉には<言霊>という力が宿っているので、人を傷つけたり、勇気づけたりすることができる。だから言葉を大切にしよう」というのである。
最後の結論はよいとしても、<言霊>という迷信を、判断力のない子どもに対して、あたかも本当に存在するかのように説明するのは適切ではないだろう。これではまるで学校が<霊的な力>を認めていることになりかねない。

このような問題については、すでに左巻先生が指摘しており、その著書を参照するように書かれていた。私はこのあとがきを読んで、この本を思わず買ってしまった。
http://d.hatena.ne.jp/ky823/searchdiary?word=%2a%5b%c6%c9%bd%f1%5d