知らなかったこと  全国的な学力調査の問題例

 うかつなことに、平成18年12月20日にすでに公開されていたようです。
マスコミにもそれほど取り上げられていなかったのではないでしょうか?
月曜には同僚に回覧して反応が楽しみです

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/12/06122103.htm
平成19年度全国学力・学習状況調査の予備調査の問題例について−文部科学省

予備調査問題の具体例 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/12/06122103/001.pdf
児童質問紙(小学校)http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/12/06122103/002.pdf
学校質問紙(小学校)http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/12/06122103/004.pdf

すでに、先週実施マニュアルは学校に届きました
そう言えばVHSのテープもあった(DVDじゃないのか!)

ちなみに、1月30日には「全国学力・学習状況調査 リーフレット」も公開された
これはまだ学校に届いていない
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/07012901/001.pdf A3版
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/07012901/002.pdf A4版

ちなみに、このような論評も発見した
じつはこれを読んで公開を知ったのだ
(有)教育報道出版社 http://www.e-hodo.com/ の論断

PISA型学力への拡張と「協働」

 「平成19年度全国学力・学習状況調査」の問題例が文科省から公開された。興味深いのは、国語も算数も「知識」と「活用」という二つの出題領域から出題されている点だ。「知識」を問う問題では、正しい漢字の適用や、比較的単純な計算で答えが導ける内容が出題されている。この部分は、今まで「基礎学力」と言われてきた領域での出題だと言える。漢字のドリルやワーク、計算問題をこなしていればさほど難しい問題ではない。
 一方、「活用」では、文章の中から問題の設問に必要な情報を選んだり、表やグラフなどの中から問題を解くために必要な数学的情報を選択・判断して行かねばならない内容になっている。例題を見る限り、PISA調査と非常に近い出題傾向だと言える。
 また、「基礎と応用」ではなく、「知識と活用」という知識領域の設定にも意図を感じる。「学校教育において学習することは日常場面に適用できることも含めて基礎基本である(問題作成と質問紙調査に関する意見の整理)」という、知識を活用する力も学力の基礎と捉えた点は、基礎学力観の転換を図ることを意図したものであろう。
 これまで、基礎知識は応用力に先行する学力だと考えられて来た。これは、まず概念的知識(わかる)が先行して、手続き的知識(できる)様になるという、かなり古い学力観に根ざした考え方である。わかる+できる=学力という学力観は、①わかるしできる②わかるができない③できるがわからない④わからないからできないという、「理解の四領域(ハイバート&レフィーバー/1986)」の学説が拡がったものと思われる。基礎知識の獲得が先行する学力であり、応用は後発の学力だという捉えは、わかりやすいが現実の学力とは異なっている。
 基礎学力はこれまで、建物にたとえられることが多かった。建物の基礎がしっかりしてこそ、その上に応用という高度な建築物が建つという重層的学力観である。それ故、基礎構造を支える地盤の力や、基礎構造の材料が木であるか鉄であるかという様な質的問題は不問にされてしまったのである。その結果、大衆は「土台と建物」という省略された単純な学力構造に疑問を感じなくなった。
 基礎的な知識も学力の基礎には違いないが、活用の基礎的な能力も学力の基礎である。一年生が学ぶ算数は数学の基礎的知識であり、同時に基礎的な知識を活用する能力の基礎も学力の基礎である。最近の研究では、「わかる」が先行し、「できる」が後に位置するのではなく、「わかる」と「できる」を往復することによって、双方が完成をしていくという見方(B.ritte/2001)が主流になってきた。今回の学力テストは、知識の活用力の基礎的能力も基礎学力だということを示しており、基礎学力観の変更を迫るものだと言えよう。
 更に、今後は「わかる」+「できる」に加え、「他者との関わりの中で知識を実用する」という、社会的文脈での活用能力も含めて「基礎学力である」といわれる時代が来ると予測する。建物の基礎に例えれば、基礎工事をする作業者のチームワークや設計者と作業者の連携がこれにあたる。筆者の言う「協働学力」も、そうした社会的な知の活用能力を意味している。独りでわかることもあれば、共にわかるという「わかる」もある。学力の基礎は、昔も今も変わらないという俗説は徐々に影を潜めていくであろう。(2007/1/16)