甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

12/10の日記で紹介した本の中に載っていたのでamazonで買っておいた
ブックレビューでも好評だが、まさにそのとおりであった
ほとんどを年頭に読んだのだが、感動的な本である

 ある時から高畠は、自分の胸を指して「最後はここだよ」と、一定以上の技術を持つ選手たち
の優劣は、ハートの強さで決まることを周囲に話すようになった。
 では、そのハートの強さをどう身につけさせればいいのか。
 さまざまな工夫でバッティングの練習方法を編み出してきた高畠が、心理学の道にその探究心
を向けるのは、必然だったのかもしれない。
 打撃コーチとして多忙を極めていた高畠は、平成一〇年から日本大学の通信教育部に通い始め
るのである。
 青年心理を学んでいた頃の高畠の勉強ノートが残されている。そこには、几帳面な字で、
 〈理解とは、新しい情報を古い知識と関連づけて受け入れること。足し算を知らないと引き算は
理解できない。掛け算を知らないと割り算を理解できない〉
 二度覚えたことを忘れないようにするには、理解をともなわない短期記憶はたちまち忘れて’
まう。理解し、記憶したつもりの中期記憶も又失われてしまう。長期記憶として定着させると訥
の方法論は、反復すること。このたった一つの方法は、反復。ようするに復習すること〉
 〈早期練習法 時間の経過と忘却率の関係 「記憶の保持率は時間幅と対数曲線を描いて低くか
る」 記憶して9時間までの問に保持率は急速に低下する。覚えたつもりの中期記憶がどんどん
消えていく。したがってこの中期記憶が残っている間に反復学習すると記憶の保持率が飛躍的に
高まることがわかっている↓しつこく復習する〉
 〈人に話す、人に教えることは記憶を強化する次のメリットがある。記憶の強化。思い出すこと
で記憶が整理され、自分の言葉が聴覚を刺激する。教えることは、理解型記憶になっているかど
うかチェックできる。記憶の出力確認になる 子なわち)自分かコーチになったつもりで自分を
コフチする。よく打った投手 なんで打てたかを話させる。たまたまです、という人はいなご
 ……等々と、記されている。おそらく高畠は具体的な選手の顔を浮かべ、そして新たなコーチ
ングの方法を考えながら、このノートを綴ったに違いない。
 だが、この心理学の勉強は、やがて「教育」そのものへの願望へと変わっていく。当初は、
「選手指導の参考に」という大学入学だったが、次第に、
 「若い子たちに将来に向かって生きる力を与える、そんな存在になりたい。頑張れば何事もやれ
るということを教えてやりたい」

 と、思うようになっていく。そして五年がかりで教員免許を取得したのである。

30年のコーチ人生で掴んだ高畠の到達点、それは
「才能とは、逃げ出さないこと」
「平凡の繰り返しが非凡になる」
という真理に他ならない。